主人公は僕だった
お誘い頂いた試写会にて。
どんな映画かはあまり知らないまま上映スタート。
お固い地味で几帳面な税務署努めのハロルドは、
ある日、自分だけに聞こえる声に悩まされることになる。
それはまるで「自分を主人公にした小説のナレーション」だった。
そしてその声は「…死を招こうとは、彼は知る由もなかった」と…
どうにか自分の死を阻止しようとするハロルド。
その手助けをするヒルバート教授。
ハロルドの人生を彩るなるアン。
そしてその小説の作家。
ハロルドはこのままそのストーリーにあわせて死を迎えるのか…
以下、ネタバレ
たしかに1アイデアの映画ではあるのだけど
それをつつむお話、セット、キャストも上質なため
1アイデアにたよりすぎないバランスのとれた映画だと思いました。
また、派手さはないけど丁寧につくられた映像もセンスがよいのです。
歯磨き、バス停までの歩数まで毎日同じ、
仕事以外だれとも話もしないハロルドの生活する家、職場はソリッドモダンな空間。
人生を楽しみ、思う通り謳歌するパン屋アンの生活する家、お店はあたたかいく雑多な空間。
極端に描かれた二人が混ざって行く。
それぞれのキャラクターや、ハロルドが人生を楽しむ過程などがわかりやすいけどあざとくなく描かれていて
非常に見ていて気持ちがよかったです。
物語はハロルドが小説家と対峙するシーンが私にとってのクライマックス。
あとはハロルドが「死ぬ」か「生かされる」かですから。
小説家とどんなふうに対面するのか、それだけでドキドキ。
「小説家が自分の創造した主人公に訪問される」というリアルな驚きや怯えを楽しめました。
試写会の会場もそのシーンが一番盛り上がっていたように思います。
この映画が選んだ選択は「生かす」。
最後までおとぎ話をリアルギリギリに保ちました。
「シュールに殺してしまう」でもなく「それも作家の頭の中の出来事」
など、いろいろできたであろう中からこの答えを選んだのはなぜなんでしょうね。
でも、あったかい気持ちのまま映画館を出られたのでよかったかな?